牡蠣マニアのぼやき「人生で一番美味かった牡蠣」

今まで食べた牡蠣で一番美味しかったのは、ニューヨークの「グランドセントラルオイスターバー&レストラン」で食べた牡蠣だ。

もう20年以上前になる。当時父を亡くして一年。悲嘆に暮れる毎日だった私と母を、ニューヨークに住んでいる知人夫妻が気分転換を、と招待してくれたのだ。

今でも牡蠣を食べる時には、活気あるお店と赤白チェックのテーブルクロスを思い出す。

初めてのアメリカ、初めてのニューヨーク

ニューヨーク滞在中はずっと晴れだったのに、その日は珍しく曇っていた。ニューヨーク郊外にある、知人夫妻の家から最寄駅までは車で、駅からは鉄道でニューヨークの中心街、終着駅のグランド・セントラル・ターミナルまで行った。

海外に行くのが初めてだった私は、知人夫妻が住む家の大きさに驚いた。

何しろ玄関のドアを開けて敷地を出るまでに、歩いて3分はかかるのだ。それほど広いのに庭の芝や庭木はちゃんと手入れされていた。聞いてみると庭師を雇っていたらしい。

家は林に囲まれていて、隣家が見えない配慮もされていた。知人夫妻は商売で成功していると後で母から聞いた。

母と私が通されたゲストルームは地下一階にあった。あれだけ大きな敷地なのに、なぜ地下室があるのか当時の私には分からなかったし、今でも謎だ。

しかし、初めて行く異国の地で、騒音がなく静かな環境で眠れるのはとてもありがたかった。

アメリカらしいスケールの大きな店構えに驚く

グランド・セントラル・ターミナルは驚くほど大きい駅だった。日本で言えば東京駅のような場所だから大きくて当然なのだが「やはりアメリカはスケールが大きいものだ」と圧倒された。

そしてお目当ての店のスケールにも驚いた。駅の中にこんなに大きな店があるのか、と。

店に到着する前に聞いていたのは、ニューヨークでは意外と牡蠣はメジャーな食べ物だということ。日によっては、1個1ドルといった安売りをする日もあるらしい。

店に入るとテーブル席に通された。テーブルには特徴的な赤と白のチェックのテーブルクロスがかけられていた。聞くとお店のトレードマークなのだという。

土曜日の夜の店内はとてもざわざわしていた記憶がある。ざわざわと言っても不快なものではなく、とても活気が感じられる都会の喧騒という印象だ。

アメリカに行く前に同級生から「アメリカのお店は接客が雑で驚くよ」と聞いていたが、かの店ではそんなことはなく、丁寧な接客だった。

ニューヨークのオイスター料理をいただく

テーブルにオイスター料理がやってきた。

いわゆる大皿料理形式で、3種類ほど運ばれてきた。ひとつは生牡蠣の皿で、アメリカ西海岸と東海岸の両方が楽しめるもの。それから大きなロブスターが盛られた皿、そしてシュリンプが美しい模様のように並べられた皿だった。

さっそく生牡蠣に手を伸ばしてみる。後から思えば日本の牡蠣の方が大きかったと思うのだが、当時はあまり気にならなかった。店内にHIROSHIMAとローマ字で読めたから、日本からきた牡蠣も入っていたかもしれない

初めて行った海外で食べる牡蠣は、私にとっては少し複雑な味だった。確かに美味しかった。でも、父と一緒に食べたかったという気持ちもあったのだ。

父を前年に亡くして落ち込んでいた私と母は、牡蠣を食べているうちにその陽気な店内の印象と美味しい牡蠣で少し癒された

その日は生牡蠣のほかにも海産物をたらふく食べた。最初はこわごわ食べていたが、その芳醇な香りにだんだん慣れてきた。食べざかりだった私は食欲が抑えきれず、結局お腹がはち切れるほど牡蠣を食べたのだった。 

品川であのお店に行ったが・・

あれから20年。一度行ったきり、かの店には行く機会はなかった。

ある日ネットをチェックしていたらグランドセントラルオイスターバーが日本にも進出してくる、との情報を得た。定期的にチェックしていると、どうも品川にオープンするらしい。

開店するとすぐに予約して行った。当時鳴り物入りで登場しただけあって、予約を取るのもひと苦労だった。が、友人が手をまわしてくれ、なんとか予約をとることができたのだ。

店内はニューヨークの店を忠実に再現していて、あの時の記憶が蘇ってきた。唯一違うのは、働いている店員が皆日本人でニューヨークのお店以上に丁寧に接客をしてくれることだ 。

それから自身で会計をして驚いたのが、意外と高級な料理だったということだ。ニューヨークで食べた時には、知人夫妻が全て会計をしてくれたので値段はよくわからなかった。思い返すと我々は300ドルぐらい食べたのではないだろうか。 

生牡蠣をいただいた。やはり美味しかった。

でもあの時に食べた牡蠣の思い出を超えることはできなかった。当時落ち込んでいた時の私を、おおいに励ましてくれた思い出とともにあるからだろう。 

あれ以上の美味しい牡蠣には今まで出会ったことがない。

 

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